ホルモンについて
ドーパミン
ドーパミンは、「意欲」「運動」「快楽」に関係する神経伝達物質で、「気持ちが良い」「心地良い」と感じると出るといわれています。
最近の研究で、ドーパミンは「この先何かいいことがあると感じたときに出るらしい」ということが分かってきました。
私たちが何かをしようという「意欲」を持ったときにドーパミンが出て、それが「楽しい」という「快楽感」につながることはほぼ確実と考えられていて、これに異議を唱える脳科学者はほとんどいません。
ですから、「ようし、これから勉強するぞ」と意欲を持ち、気持ち良く勉強することでドーパミンの働きが活発になり、勉強や仕事の効率が上がるということは十分考えられることなのです。
やる気は、人間の脳の部位「側坐核(そくざかく)」から分泌される「ドーパミン」という脳内物質によってもたらされていることが科学的に実証されています。やる気がある状態とはいわば「ドーパミンが大量に分泌されている状態」なのです。
そして、やる気を生み出してくれるドーパミンは、簡単な方法で大量に分泌させられることが立証されています。今回は、ドーパミンを豊富に分泌する方法をご紹介しましょう。皆さんもこの記事を読めば、「やる気がない」状態から抜け出せるかもしれませんよ。
自分に報酬を与える
側坐核は、勉強を行なう、体を動かすなど「実際に行動を起こしているとき」に活性化します。つまり、ドーパミンは行動することによって分泌されるのです。逆に寝転がっているときや、座ってテレビを見ているときなど、活動していないときにはドーパミンが分泌されません。行動しないとドーパミンは分泌されないので、やる気を出したいと思ったら、まず動くことが肝心です。
脳科学者の澤口俊之氏によれば、人間はお金や自分に対する評価など、「報酬への期待を感じて」動くとき、ドーパミンが大量に分泌されるそうです。例えば、あなたにとって辛い仕事を担当しているとき、なんのメリットもなければやる気が出ないかもしれませんが、「完了すれば大金が手に入る」と聞けば、がぜんやる気が生じると思います。
上記は極端な例ですが、例えば、課題に取り組んでいる際は「あと1時間勉強したらケーキを食べていい」「このタスクが終わったら昨日録画したドラマを観ていい」と、自分に対する「ごほうび」を設定するのです。ごほうびがあれば、作業がはかどってドーパミンの分泌量が増えるでしょう。
ドーパミンの分泌02
音楽を聴きながら作業を行なう
2009年、カナダ・マギル大学の研究チームは、米科学誌『ネイチャー・ニューロサイエンス』(電子版)に「音楽はドーパミンを分泌させる効果がある」という内容の論文を発表しました。研究チームが8人の被験者の状態を調べたところ、好きな音楽を聴いてワクワクしているときに被験者たちの身体活動が活発化し、脳内からドーパミンが分泌されることが判明したそうです。
ちなみに、ドーパミンの分泌は、好きな音楽を聴く前の期待感でも発生することが確認されています。一方、特に好みではない音楽を聴いていた場合、ドーパミンの分泌の活性化は確認されなかったそうです。
医学博士の藤本幸弘氏によると、音楽を聴くことによってドーパミンが大量に放出され、「ランナーズ・ハイ」(長時間走り続けた時に感じる多幸感)に似た、一種の興奮状態になることがあるそうです。皆さんも、好きなアーティストの音楽を流しながら作業を行えば、想像以上にはかどるかもしれませんね。
クラシック音楽愛好家でもある藤本氏は、複雑な旋律を持つクラシック音楽を理解することは、脳に「難しいものを克服した」という報酬効果を与えると語ります。ちなみに、藤本氏いわく、ドーパミンの分泌に特に有効なクラシック音楽はラフマニノフの「鐘」なのだそう。クラシック音楽に興味がある方は聴いてみてはいかがでしょうか。
なお、勉強に対して音楽がどのように作用するかについては「勉強中の『音楽』について徹底考察。集中力が手に入る、音楽の聞き方と選び方。」をご覧ください。
ドーパミンの分泌03
ドーパミン生成に必要な栄養素を摂取する
ブレインケアクリニック院長の今野裕之氏によると、ドーパミンの生成原料となるのは、タンパク質に含まれるアミノ酸の一種、フェニルアラニンやチロシン。ドーパミンとタンパク質は関係しているため、タンパク質が豊富な食べ物をしっかり摂取すると、肉体的、精神的な疲れを軽減することができます。
今野氏は、タンパク質が効率よく摂取できる食品として、パルメザンチーズや鰹節、卵白などをあげています。さらに、大豆はチロシンを多く含んでおり、「ブレイン・フーズ」と呼ばれるほど脳を活性化させる効果があります。効率的にドーパミンを分泌させたい方には、豆腐やおから、納豆や煮豆を多く食べることをおすすめします。
また、脳が疲労を感じていると、機能が鈍ってドーパミンが放出されない可能性があります。今野氏によると、ビタミンB12は脳の疲労を回復させる効果があり、動物のレバー(肝臓)、貝類、海苔、魚卵などに多く含まれているそうです。
食生活の改善がドーパミンの分泌につながるのです。
ドーパミンの分泌04
瞑想を行なう
瞑想(めいそう)とは、心を穏やかにして祈ったり、無心になったりといった行為のこと。ミステリアスなイメージがありますが、瞑想にはドーパミンを放出する効果があります。
同志社大学大学院脳科学研究科の貫名信行教授によると、瞑想を行なっているとき、ガンマ波と呼ばれる人間の認知活動に関わる脳波の量が増加するそうです。また、瞑想を1日に10時間程度行なうチベット仏教の僧侶たちの大脳を調べると、思考や創造性を担う前頭前野の皮質が厚くなっていることが判明しました。
欧米では、東洋の禅(座禅)をモデルにした「ZEN」と呼ばれる瞑想法が人気を博しており、オフィスの一角やホテルには「ZEN ROOM」が設けられていることが多々あります。
日本で禅と聞くと、寺院で行なう厳しい修行というイメージがありますよね。しかし本来、禅には明確なルールが存在しないので、自宅や庭などで行なうことも可能です。ただ、イライラしやすい空腹時やお腹が圧迫される満腹時は控えた方が無難でしょう。
また、禅を行なう際は、体に負担をかけないゆったりとした服装、集中力がそがれない静かな環境だと、よりリラックスしやすくなります。座ったときに負担がかからないよう、マットや座布団を使うのもオススメです。仕事に取り掛かる際に、一度禅を組めば、やる気がアップするかもしれませんよ。
また、朝は忙しくて、禅を組む余裕はないという方もおられるかと思います。忙しいときのために、わずか1分前後で実行できる瞑想法を紹介しましょう。
まず、目を閉じて4秒間ほど深くまで鼻から息を吸い込みます。息を吸い込むときは、酸素が体を巡っていることをイメージしてください。次に、7秒ほど息を止めた後、8秒ほどかけて息を吐き出します。吐き出すときには、抱えているストレスが体から逃げていくのをイメージするのです。
4秒かけて息を吸い、7秒間息を止め、8秒かけて息を吐き出すこの方法は、アリゾナ大学医学部のアンドルー・ワイル教授が提唱した「4−7−8呼吸法」と呼ばれるもの。呼吸を深くする行為は鎮静剤のような効果をもたらすのだそう。
慌ただしい生活を送っているビジネスパーソンも、4−7−8呼吸法を休憩時間や仕事の合間に行なってみてはいかがでしょうか。
シリーズ2 第13回 | フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」 | 中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室
やる気のもと「ドーパミン」を脳内で増やす4つの方法。“やる気が出ない” は科学的に改善可能。 – STUDY HACKER|これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディア
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